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品種「ゴブレット」「シャインレッド」「雪うさぎ」誕生ストーリー

​ガーデンシクラメンのはじまりも含めて

会社案内

ガーデンシクラメンのゴブレットは2014年、シャインレッドは2015年、そして雪うさぎは2018年に発売になりました。

当時のガーデンシクラメンは、今日のように品種の種類が多くなかったこともあり、これらの品種が発売されるとすぐにマーケットの話題となりました。そして未だ高い人気を誇っています。なぜでしょう。

濃くてシックなワインレッド、鮮やかな赤、薄っすらと青みを帯びたピンク。

この周辺が白くなるという”映える”花色もさることながら

これらの品種の最大の特徴はその強さです。

​オランダはバリノバ社(2018年にシンジェンタ社へ売却)により開発されたこれらの品種には

実は日本が深く関わっていました。

​デザイン・撮影:Flower Shop LOBELIA 上田広樹
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F-1ミニメイトシリーズ

育種家バート・カイヤー氏

バリノバ社の社長兼育種家であったバート・カイヤー氏。もともとはデルィータ社という野菜専門の会社の開発部門で細々とシクラメンの育種を行っていました。今では当たり前となっているミニシクラメンのF-1品種ですが、これを世界的にいちはやく手掛けたひとりがバート氏です。1990年代当時、世界にF-1のミニシクラメンはほとんどありませんでした。F-1とは一代交雑種といい、雑種強勢により、揃いがよく、また強健であることが特徴です。

バート氏の最初のF-1のミニシクラメンがミニメイトシリーズです。赤や白、ピンク、紫、サーモン色などが揃ったミニメイトシリーズが欧州マーケットにて発表されました。

泉農園 鷹見直美氏

当時の日本でこの情報をいちはやくキャッチした人がいました。日本のシクラメン第一任者、岐阜県中津川市の泉農園 鷹見直美氏です。

オランダにF-1の強いミニシクラメンがあるらしい。鷹見氏の命をうけた種苗会社の白山貿易(現ハクサン)がデルィータ社からF-1ミニメイトを輸入。日本の環境にあうかどうか、泉農園で試験生産がはじまります。

​バート・カイヤー氏、泉農園 鷹見直美氏、ハクサン 井村隆伸氏
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ガーデンシクラメンの誕生

同じころ、シクラメン生産者たけいち農園の田島嶽は、有名テーマパークをはじめ多くの植栽計画を手掛けたランドスケープアーキテクト山本紀久氏に見せてもらった温暖な地域の屋外の木陰に咲くシクラメンの風景写真が忘れられずにいました。

そんなとき、田島のもとにも白山貿易からF-1ミニメイトの試験生産の話が入ります。

1995年、最初の試験生産の結果、F-1ミニメイトはそれまでのミニシクラメンとは違い、花が灰色カビ病に強く、また連続開花性に優れていることが分かりました。何よりも揃いがよく、強健なF-1品種であるということが魅力的でした。

この品種であれば関東以西の暖地向けに屋外で楽しむシクラメンの提案ができる。ガーデンシクラメンの誕生です。

肥料会社のハイポネックスジャパン、兵庫県の園芸専門店の緑のマーケットと協力し、翌1996年、8,000ポットが生産されマーケットにリリースされました。

F-1品種の需要拡大

​ガーデンシクラメンの登場の人気の高まりにより、ミニシクラメンの流通量が飛躍的に増加、それに伴い種苗会社による品種開発も盛んになっていきます。2000年代に入ると、各社でF-1品種が開発され日本に導入されました。もともと南欧ではシクラメンが屋外に植えられて楽しまれていましたが、日本のガーデンシクラメンのアイデアはそれ以外のヨーロッパ地域やアメリカに渡り、より多くの国の屋外で楽しまれるようになっていきます。種子の需要は益々増大していきました。

バート氏の成功

ガーデンシクラメンの登場によりF-1ミニメイトの優位性が評価され、成功をおさめたバート氏はデルィータ社を退社、シクラメン専門の育種会社バリノバ社を立ち上げます。そしてF-1ミニメイトの後継種F-1メロディーシリーズ、F-1ミュージカルシリーズ、F-1ピコラシリーズを次々と作り出しました。いずれの品種にも灰色カビ病に強くガーデンに適しているという特徴はそのまま引き継がれていきました。

 

​※現在はピコラシリーズのみ販売されています。

ゴブレットの誕生

バート氏の品種を高く評価し、その生産を通じてバート氏と親交を深めていた泉農園の鷹見氏。鷹見氏自身もシクラメンの育種家として有名な方で、今ではどこでも目にするようになった花弁の周辺が白くなる品種を開発したひとりが鷹見氏です。

2007年、鷹見氏は自身のこの品種をバート氏に託します。これを使って更に開発を進めて欲しい。夏季、秋季の温度が高く多湿な環境下で開発される日本のシクラメンには灰色カビ病に強いものが多いことが特徴です。鷹見氏の品種もやはりそのようにして強健なものでした。

もともと強健だったバート氏の系統。そこに鷹見氏の花弁の周辺が白くなる強健な系統が掛け合わされていきます。そうしてわずか6年のうちに最初の試験品種が日本に導入されました。翌2014年にはゴブレットが、2015年にはシャインレッドがマーケットにリリースとなります。そして、その後2018年には雪うさぎがリリースとなっています。いずれの品種も花弁に灰色カビ病が入ったところはほとんど見たことがありません。現在流通しているシクラメンでも最も強い系統のひとつといえます。

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